終戦から7年目の夏、安城建築創業者の浅井正一は大工の棟梁として多くの職人たちとともに額に汗をかきながら仕事をしておりました。

戦後の高度成長を肌で感じ、大工作業場拡大の急務を要していましたが、購入代金の資金がなく、地方の銀行に再三お願いにあがるものの、答えはどこも同じでした。「資産のないあなたに融資はできません」。すべての銀行に断られ、途方に暮れました。そして最後の望みを託して、明治横山農協（現在のJA）の小野組合長に直接お願いにあがったそうです。

組合長はしばらく沈黙した後「浅井さん、あなたの手を見せてください」と言われ、仕事でボロボロの両手をそっと差し出すと「う～ん、働き者のいい手だ。私はこの手を信じてみます」と融資してくださったそうです。

後に浅井正一はこの出来事を「今こうして安城建築が繁栄したのは小野組合長のおかげです。あのときのご恩は一生忘れることはない」と話してくれました。